会頭メッセージ
薬学の発展と未来に向けて
2017年3月に日本薬学会の会頭を拝命いたしました奥です。会頭となって瞬く間に1年を経過しましたが、残り1年間も学会の発展に尽力する決意を新たにしているところです。新年度を迎え一言ご挨拶申し上げます。
日本薬学会は1880年の創設以来140年弱の歴史と伝統を有し、1万7千名の会員を有する我が国有数の学会であり、薬学における中核的学術団体です。薬学の共通基盤は「くすり」であり、薬学は医薬品の創製、製造、生体での作用機序、安全性と有効性、供給、適正使用などの広範な分野とともに、再生医療や医療機器、健康や食品を含めた我々の生活を支える重要な分野を担っています。超高齢社会の先端を進む我が国において、実学としての薬学の共通基盤により、学術の発展等に貢献する学会として、存在感をますます高め、未来に向けて発展していく取り組みについて述べさせていただきます。
日本薬学会会頭 奥 直人
学会の使命の一つは学会員に適切な情報をいち早く提供し、また情報発信・情報交換の場を提供することです。薬学に関連する広範な分野から会員等が集う年会は本学会の中でも最も大きな学術集会です。本年3月には138 年会が金沢で開催され、活発な発表と討論が行われました。明年は3月20日~23日に千葉県幕張での開催が予定されていますので、ご期待ください。本学会には各領域の専門性に基づく部会、および地域に基づく支部があります。 部会、支部の活動は日本薬学会の原動力であり、部会、支部および年会における顕彰活動、優秀発表賞や奨励賞は、 若手研究者の薬学研究への意欲を高め、同時に日本薬学会への帰属意識を高めることに寄与していると考えています。
学会誌の発行は学会の重要な仕事です。日本薬学会はChem. Pharm. Bull., Biol. Pharm. Bull. 薬学雑誌の学術誌3誌、ならびに学会の情報誌としてファルマシアを発行することにより、薬学の進展に貢献してまいりました。また編集体制を充実させ高質な情報提供を図るとともに、学術誌の査読・編集・出版の迅速化を図ってまいりました。英文2誌に関しましては、科学技術振興機構(JST)の協力を得て、J-stageを利用した画面インターフェースの開発を促進し、閲覧の利便性の向上を図りました。現在更なる情報発信機能の強化のために、生物系のオンラインジャーナルとしてBPB Reportsの刊行準備を進めています。
さて若手研究者への支援は、我が国の薬学の発展に欠かせないものと位置付けております。本学会では4年制博士課程・博士後期課程を対象とする「長井記念薬学研究奨励事業」が順調に機能しており、今後もその充実を図りたいと考えています。また高校生以下の次世代層に薬学の魅力を伝えるために、日本学術振興会の卓越研究成果公開事業を通して,ネット上で薬学研究に関する情報を公開する準備を進めております。このほか多くの人に親しまれる日本薬学会となるように、 本学会のホームページを一新しました。スマホなどで気楽に閲覧していただければと思います。本学会では、学会の国際化、海外会員を含む会員制度の充実などにも力を入れています。皆様の学会として今後とも温かいご支援をいただければ幸いと存じます。